さくら

さくら さくら さくらの花が咲く
さくら さくら さくらの花が咲く

一夜の夢枕  風に誘われ
春偲ぶせせらぎ  揺れる
はかなく無常に舞う花吹雪

月に照らされ  幾千の世
  はなやいだ
見守りし時を   越えて
  宴の夜

闇に  きらめく
秘める  浮世の
想いの果て

さくら さくら さくらの花が散る
さくら さくら さくらの花が散る



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兆し

青い草が 涼やかに揺れている
裸足になりて 踏み歩めば
足にからみて影もゆく
真夏の真昼 空高く
ふいに命が匂い立つ

森も山も せせらぎも語り出す
花を一輪 手折りしとき
幼き日より聞かされた
人の憂き節 愛される
古よりの物語り

なぜか痛い
この胸抱くとき
逃れられない 定めを見る
うねりの中に身を投げて
咲いて散りゆく花ひとつ
光を添わす ひとゆえに
たったひとりの ひとゆえに


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はらり はらり はらはら はらり
とめどなくつもる寂しさ
睦月 卯月 皐月 水無月
いよよ君恋し

泣かせた数多の夜を
悔いてはまた涙がほろ
はかなきうつせみの世と
胸いたく口惜しく

夢とうつつゆきつもどりつ
在りし日の幻慕う
はらり はらり はらはら はらり
命剥がれ落つ

あるじを亡くした庭に
今年も撫子が咲く
色をなくしたこの世に
長らえる甲斐もない

そこは いづこ
ここは 虚し
手を伸べてもなぜ迎えに来ない

はらり はらり はらはら はらり
雲にその行方を尋ね
はらり はらり はらはら はらり
今日も泣き暮らす

文月 葉月 はや神無月

はらり はらり はらはら はらり